漢方治療の実際

★ 高脂血症

  高脂血症は動脈硬化の危険因子であり、動脈硬化が進むと、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)などの危険が増加します。
漢方では種々の生薬に脂質改善作用が確認されたいます。柴胡(さいこ)黄芩(おうごん)人参(にんじん)大黄(だいおう)黄連(おうれん)などが其の一例で、高脂血症の治療にはこれらを含む薬方が用いられます。
しかし、高脂血症の治療は食事療法と運動が基本であり、極端にコレステロール、中性脂肪などが高い場合は西洋薬も考慮するべきです。
漢方は直接的な血中脂質値の改善よりも、西洋薬は副作用がでて使用できない場合や、全身状態の改善、随伴症状の改善などを目標と考えています。


     高脂血症の頻用処方

   大柴胡湯(だいさいことう)
筋肉質で固太りの肥満。胸脇苦満(季肋部の抵抗圧痛)が強度にみられる。便秘傾向。

   防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
固太りの肥満。太鼓腹。便秘傾向がある。

   防已黄耆湯(ぼうぎおうぎとう)
 水太りタイプの肥満。むくみやすく、汗が多い。変形性膝関節症によく用いる。

   桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
生理痛、月経前症候群など生理に関係する症状。便秘、肩こり、 のぼせ、いらいら等がある場合が多い。


 最近よくテレビ等ででメタボリックに対しての防風通聖散の宣伝を目にします。
防風通聖散は大黄、芒硝という2種類の下剤が配合された漢方薬で、身体のがっちりした固太りの、漢方で言う実証にむく薬方です。ダイエットのつもりで虚証の人が飲みますと、下痢、腹痛などが起こり、体力抵抗力が衰え、具合の悪いことになります。
防風通聖散は証にあった人が飲めば非常によい薬で、色々な症状や病気に効果がありますが、これさえ飲めば誰でも痩せるというわけにはいきません。
たとえば虚証で水太りの人ですと、防已黄耆湯の方が良く効くものです。
しかし、ダイエットは食事療法と運動療法が基本です。私も分かってはいるのですが、なかなか三日坊主が治りません。



                                           金匱会診療所所長
                                                 山田享弘