漢方のお話 4 |
すり鉢で胡麻の種を摺りつぶすと、鉢の内側の周りについてしまいます。あちらにも、こちらにもつく。人に諂う(へつらう)態度をいいます。幕末の天保頃から流行した俗言で、初めは告げ口する意味で使われてました。 古代の中国では遠く西域からシルクロードを経由して、伝来した植物や物品に胡(西方の異民族)の字をかぶせて名づけています。例えば胡桃(クルミ)、胡瓜(キュウリ)などで胡麻もその一つです。 紀元前126年にシルクロード交通の開設者張塞が中央アジアの大苑から持ち帰ったという古書もありますが、紀元前3000年頃の浙江省の遺跡から黒胡麻の種子が出土したとも云われているので、古くから中国に入っていたことがわかります。 ゴマはゴマ科、一年草で、熱帯アフリカ原産です。ゴマの種子には良質の油が多く含まれていて、なお独特な芳香があるので、昔から食用として重く用いられてきました。奈良時代の正倉院の文書に諸国から胡麻が貢物とされていた記録があります。奈良時代の食用油としては荏油(エゴマの油)、曼椒油(イヌザンショウの油)、麻子油(アサの実の油)、海石榴油(ツバキの実の油)などがあり、その中でも胡麻油が最も多く使われていたとの記録もあります。 漢方薬にも胡麻油が使われております。ヤケドの薬や痔の治療に使われる紫雲膏の基材として、純粋な胡麻油が用いられ、当診療所自製の紫雲膏は伝統的な製法で製られております 。(小根山隆祥) |
先日、当診療所の初代所長:大塚敬節先生の生誕百周年の記念式典が都内のホテルで催されましたが、その際大塚敬節先生の「漢方診療医典」の原稿などが展示されました。もちろん手書きで、所々修正がありました。私などはすでに漢字がほとんど書けない状態になっていまして、手書きで原稿を書こうなどと思ったら漢和辞典と首っ引きになってしまいます。ワープロは非常に便利で、校正も簡単だし、一度書いた原稿の使い回しもできるしで、良いことだらけですが、どうも使っている人間の頭はその分劣化してくるような気がします。漢方の原稿を書くときに問題になるのは、漢方用語、生薬名などに一般にワープロに入っていない漢字が多いことです。以前は外字を作って印刷をしていましたが、現在のようにインターネットなど通信を使うようになりますと、相手のパソコンに外字が入っていないと字が抜けてしまいます。最近ではユニコードが使えるワープロも出てきまして、ユニコードですとほとんどの漢方用語が間に合いますが、やはりユニコードのフォントとそれを使える環境がないと役に立ちません。MSのInternet Explorerなどもユニコードの表示が出来ないようなので、この「漢方のお話」のなかでも生薬名などを書くときに(くさかんむりに弓)などというように、なかなか苦労があります。日本語でパソコンやワープロを使う環境がもう少し整わないかなー、との思いがいたします。すると私の頭はますます劣化していくかもしれませんが…。(山田享弘) |
3〜4月という早春、菜の花の咲く頃、降り続く長雨を菜種梅雨という。6月過ぎの本格的な梅雨時の梅雨前線のように日本列島の南岸に前線が停滞して、雨が長く降り続くことが多い。 |
ヤナギの下で一度はドジョウを捕らえたとしても、いつもとれるとは限らない。うまい話がいつまでも転がっているわけではない。という諺です。 |
品質の悪い番茶でも、煎れたときの最初の出花は香りが高い。そのように器量の悪い娘でも十八ぐらいの年頃になれば、色気も出てきて魅力があるということで、各地にも同義の諺が多い。 |
ハスは仏教発祥の地、インドから奈良時代に中国経由で我が国に渡来し、それ以来食用や薬用に用いられてきました。 ハスの根である蓮根はイモ類と同じく植物の栄養貯蔵器官なので、でんぷんを多く含有し、古くから食品とされてきました。薬用には根の節の藕節(グウセツ、出血)、葉は荷葉(暑気あたり、喀血、吐血、鼻血など)、花托は蓮房(不正性器出血、流産防止など)、果実は蓮実、種子を蓮肉(共に下痢、不安、食欲不振など)、種子の中の子葉は蓮子心(熱性疾患の意識障害、うわごと、不安など)という各部位がそれぞれの生薬名を持ち( )内の目的で配合されて薬用に使われる。(小根山隆祥) |
雷よけのおまじないとして、また一般に恐ろしいことをさける言葉として『桑原桑原』が使われています。 |
サツマイモの味が栗に近いので、上方では九里に近い人里半という看板で売られていたが、江戸ではこれを上回る意味で、九里四里(栗より)うまいということで十三里とした。サツマイモはその名の通り薩摩の国など九州地方に先ず伝来した。その後、青木昆陽が大岡越前守を通じて、八代将軍徳川吉宗にサツマイモ栽培を進言してから江戸に普及した。 |
思いがけない好運のめぐってくることをいった諺『棚から牡丹餅』を略した言葉です。お彼岸にお萩を食べましたか。お萩は『萩の餅』の略で『牡丹餅』と形も材料も同じです。 春の彼岸に作るのが牡丹餅で、秋の彼岸に作るのがお萩とも云われてますが、餅米と粳米とをまぜて炊き、すりつぶして小さく丸め、餡(あん)・黄粉(きなこ)・胡麻(ごま)などをつけた餅のことです。煮た小豆を粒のまま散らし、かけたのが萩の花の咲き乱れる様に似るので云うとも、また牡丹の花に似るから牡丹餅だとも云います。 |
「鼻から下はすぐにあご(顎)」とは゛くちなし゛にかけた語呂合わせ、ことばの遊びです。 |
「あるを石蕗花」と続く蕪村の句です。石蕗はツワブキです。咲いているとは思っていないところに黄色い花が咲いていて、師走(12月)の寒い時期に暖かいものが身内を通り過ぎる思いがするという意味の句です。 |